日帰りの旅~別所温泉編~。

日帰りの旅~別所温泉編~。

出発前日

昨夜、MBA時代の友人の田村氏から突然電話がかかってきて、「明日、別所温泉行かない?日帰りだけど。」と告げられ、とくに断る理由もないので2つ返事で行くことを快諾した。長野に行くことは分かったのだが、そもそも別所温泉がどのあたりの場所にあるのかさっぱりわからず、誘ってくれたタムちゃんが先導してくれるからまぁいいかと、待ち合わせ時間だけ確認して電話を切った。別所温泉に着いてからGPSで自分の位置を確認したのだが、とんでもなく遠いところだった。

旅の当日

約束していたのは「基本的には贅沢はしない」ということだけ。あとはすべて行き当たりばったり。それに準じて、有料特急(新幹線含む)は使用しないで目的地まで行こうということで、まず、群馬県は高崎駅を目指す。これはJRの湘南新宿ラインに乗ってしまえば普通に向かうことができる。埼玉在住のタムちゃんとは大宮駅で待ち合わせることに。大宮駅ホームのNEWDAYSで朝ごはんと缶ビールを買っていざ高崎線に乗り込む。少々の贅沢グリーン車へ。(大宮→高崎間グリーン代:1,000円)

高崎駅

高崎駅に到着。ここは仕事でも何度か来たことがある。そのときは新幹線だったな。
ここから信越本線という在来線に乗り換えて、次の乗換駅である横川駅を目指す。

信越本線

なんか寄りすぎてちょっとわかりにくいですが、これが信越本線の顔。普通の横長シートの電車。乗客数は多くはない。空席も目立っていた。

横川駅

横川駅到着。ここはご存知の方も多いだろう、峠の釜めしで有名な駅だ。

従来は横川から先の軽井沢まで電車が走っていたようだが、残念なことに1997年に廃線になったそう。軽井沢への観光客は多いから廃線にするのはもったいない気がしないでもないが、普通は長野新幹線を利用して軽井沢へ行くのだろう。ここまではSUICAが使える。(新宿→横川:2,210円)

ということで電車はいったんここで終わり。ここからはジェイアールバス関東が運行する峠越えのバスに乗って軽井沢を目指さなければならない。(500円)

SL(デゴイチ)
SL(デゴイチ)

信越本線の中にも、「ずいぶんカメラを持った男性が多いな」と思っていたら、なんとこの日はラッキーなことにSL運行日だったようで、横川駅に停車していた。「シューッ、シューッ」っといかにも蒸気機関車のような音を出していてとてもかっこよかった。製造されたのは昭和15年だそうだ。写真のSLは「デゴイチ」と呼ばれる形なんだって。ぼくにはよくわからない。ご興味ある方はこちらからご覧くださいませ。国鉄D51形蒸気機関車

おぎのや本店

ここが峠の釜めしで有名な「おぎのや」さんの本店。釜飯が大好きなぼくにとっては、本店に来られるなんて。この旅の中で一番テンションが上がったかも。

峠の釜めし

こちらが釜飯。みそ汁つきで1,150円也。普通に考えたら高い感じが否めない。スーパーやデパートでやっている駅弁大会などで売っているものとまったく同じで、レンジで温めただけのものが出てくる。ただ、このときはお釜をラッピングしている紙のデザインが、限定の富岡製糸工場バージョンなのだとか。記念にいただいておいた。なぜ富岡製糸工場がデザインされているかというと、富岡製糸工場を世界遺産登録させるために応援でこのような活動をされているのだそうだ。ブログを書いて写真を見ていたらまた食べたくなってきた…。

店内は比較的すいていたが、SLの追っかけのおじさんたちがパラパラと食事していた。

峠の釜めし発祥の地

発祥の地です。

峠の釜めし売り

本店の向かい側には釜めし資料館(無料)があり、釜めしや横川駅ににまつわるものが所狭しと展示されている。この写真は有名な駅売りの弁当箱。軽井沢行きが廃線になった際にホームで販売するのも中止になったそうだ。あの光景はみなさんもテレビなどで1度は見たことがあるのではないだろうか。

横川の街並み

峠越えのバスに乗るまで30分くらいあったので、駅周辺を散策。このような感じで非常にひなびた場所だ。ちなみに駅前にコンビニなどは一切ない。おぎのや、郵便局、ガソリンスタンドくらいしかお店はない。

自動販売機

とにかく時代に取り残されています。こんな昭和風情満点の自動販売機が民家の軒先にちょこんと残っている。確実に飲み込まれるだろうと思ってお金は入れて試してないが、おそらく稼働してないだろう。ジョージアの250ml缶のデザインが妙に懐かしかった。

アプト式歯車

これは道路の側溝にはめ込まれた金属なのだが、わざわざ写真に撮っているし、ここにも掲載するくらいだからただの金属ではないことはご理解いただけるだろう。これは、「アプト式」という電車の車輪というか、歯車になっていた金属なのだ。

横川から軽井沢に抜けるためには碓氷峠を登らなければならず、普通の車輪では滑り落ちてしまうどころか傾斜を登れないために、通常の車輪の内側と線路にこのような歯車を設けて、かみ合わせながら山を登ったそうな。
ドイツの鉄道技術が持ち込まれ、横川⇔軽井沢間のアプト式は日本初だったそうな。こちらに詳しいです。

箱根も大きな山を電車が登るが、あちらはスイッチバックとケーブルカー形式で山を登るようになっている。

駅売り峠の釜めし


ホームで売り子さんが売りには来ないけど、駅のすぐ脇にも釜めしの売店ができていた。

軽井沢駅

横川からバスに乗って約30分で軽井沢駅に到着。碓氷峠を越えた途端に雪景色になっていて驚いた。おかげさまで軽井沢駅前のゲレンデも大盛況。だったのだが、思ったより人が少なかった。そして駅前のアウトレットモールは想像よりもはるかに小さかった。

軽井沢→上田切符

軽井沢まで来るのに、自宅を出てから約5時間。ややグロッキー状態だったので、軽井沢から上田まで新幹線に乗ることも検討したのだが、当初の約束どおり「贅沢なし」とうことでしなの鉄道で上田を目指すことにした。ちなみに、新幹線で上田まで向かうと約2,500円と3倍の運賃がかかる。時間も3倍くらい早い。(笑)

しなの鉄道 軽井沢駅
しなの鉄道

この電車で向かいます。ドアの開閉は自分でやるタイプ。「こんにちはー」って感じでみんな引き戸を開けて車両に乗り込んでくる。降りるときに自分で開けてみたのだが、たしかに「こんにちはー」って掛け声がもっともフィットしそうだ。

しなの鉄道路線図


道程はこんな感じ。上田まで直接行く電車がタイミングよくなく、小諸でいったん降りて30分ほど電車を待つことに…。

車窓から

世界の車窓から~冬の信濃路 鈍行編w~

冗談はさておき、風景はずっとこんな感じのばっかり。人が通らないところにうっすらと雪が積もっている感じで、道路には積雪はない。ノーマルタイヤの車でも問題なさそうだ。残念ながら写真には写っていないのだが、馬も放牧されていた。

しなの鉄道 小諸駅


某立ち食い蕎麦屋さんで有名ですね。「こもろ」と読みます。

しなの鉄道 小諸駅

駅前はこんな感じ。空が広い。
某立ち食い蕎麦屋にちなんで、蕎麦でも食べて30分を潰そうと思って、駅員さんに改札を出してもらったにも関わらず、蕎麦屋がない。そして店が開いてない。田舎のほうは日曜日はあまり積極的に働かないのかもしれない。

浅間登山口

浅間山が近いらしく、こんなのが立っていた。

しなの鉄道

結局なにもせずに駅に戻ったら電車が来ていたので乗り込む。さすがにこのあたりに来ると気温も低めで、外で無駄にウロウロする気にもならない。自販機でホットの缶コーヒーを買って電車内ですすって発車を待つ。

しなの鉄道 上田駅

ようやく上田に到着ー。疲れたー。しかしここからまださらに電車に乗らなければならない…。

別所線車両

廃線の危機にある上田電鉄別所線というものに乗り換えて、旅の目的地である別所温泉を目指す。ここから約30分。上田駅で往復切符と温泉の入浴券がセットになったものがあるので、それを買っていくとお得だ。(1,300円)

余談だが上田電鉄は、東京急行電鉄の子会社だそうで、この車両などはぜんぶ東急のお下がりだ。

別所温泉駅
別所温泉駅

やっと到着、別所温泉駅。家を出てから約7時間…。

別所温泉駅出入口

ここの駅舎は大正時代からのものだとかで、当時ではずいぶんとモダンな作りだったのではないかと想像できる扉のデザインです。

駅内広告看板


駅舎の中の広告看板は、こんな感じのアクリル板の広告。

別所温泉駅舎

外観はこんな感じ。ローマ字表記も一応ありますが、微妙にずらしてある文字はなにか意味があるのでしょうか…?

別所温泉駅

ホームの屋根。さすが内地なだけあって、味噌や醤油屋さんが多いようです。内地には内地なりのいいところがあるんだと思うんだけど、味覚の楽しみは海っぺりに比したら負けてしまう気がする。今回の旅ではそこが残念だったところ。先週行った箱根では、箱根も山であることには変わりないが降りて少々足を延ばせば小田原などで海鮮をいただくことができる。内地では小麦粉料理か山菜か、馬か鹿。んー。個人的には魅力を感じない。

案内図

観光地ではよくあるタイプの周辺案内マップ。

信州の鎌倉 別所温泉

近隣にお寺が多いということで、「信州の鎌倉」というキャッチコピーが。浸透してるのかしら…?

参道

ほとんど観光する場所もないので、周辺で一番有名だという北向観音へお参りすることにした。ここはその参道。ここら辺では最も栄えてる場所だと思うが、この参道も約50mほど。

北向観音 鐘

立派な鐘もありました。まだお正月の雰囲気が抜けてなくて、たくさんの出店なども。

北向観音

参拝客もたくさん。10分弱くらい並んでお参りできました。厄除けのお寺さんだそうで、これで厄介払いできてればいいんだけど。

あいそめの湯

ホントの目的地あいそめの湯さんに到着。日帰り専門の温泉で宿泊などはやっていない。先週行った箱根の箱根湯寮とは違ってかなりこじんまりな感じの施設。めっちゃくちゃ混んでて足を延ばして入ることはできなかった。露天風呂は上田の街を見ながらの景色で、積雪もあるため雪見風呂となっていた。

7時間かけて別所温泉に来たわけだが、滞在1時間半ほどで帰路に着く。じゃないと東京に戻れないのだ。

上田電鉄別所線車両

帰りの車両は昔の車両を模したデザインの車両で、当時は写真のとおり丸窓もあったそうだ。

上田電鉄別所線車両


こんな顔をしてます。

車内

車内はこんな感じで、木目調の壁紙が貼られていて重厚な雰囲気。

運賃案内板
運賃精算器

我々は往復切符を買っていたのでこれのお世話になることはなかったのだが、郊外のバスのように乗った駅と降りる駅の距離によってそれぞれの運賃を車内で精算する仕組みになっている。

扇風機

いまどきこんな扇風機がついた電車なんてなかなかない。ちなみにこの車両も東急のお下がりだった。

整理券発券機

やはりバスのように整理券のはき出し器もありました。

上田鉄道別所線路線図

これがその道程。上田⇔別所温泉間を約30分で走る。距離は11.6kmだったかな。

上田駅舎

上田駅前は、この写真とは裏腹にかなり栄えていて、地方都市の体裁だった。ちょっと歩くとすぐ何もなくなってしまうけど…。

上田駅前

イルミネーションがキラキラ。

道中、まともな食事をとったのは横川の釜めしだけだったので、地のものを食べようと居酒屋さんを探すものの、チェーン店しかない。店があったとしても開いてない。ここまで来てチェーン店もかなり残念な感じなので、ひたすらウロウロしていたら、こう太さんという居酒屋が開いていた。

入ってみると、全席予約になっていて「19時までならいいですよ」とのことだった。このとき17時半くらい。しかし、我々も東京まで戻らなければならないのと、ほかに店がないので入ることにした。聞くところによると翌日が成人式のために若者が地元に戻ってきて、その飲み会が入っているのだそうだ。たしかに若い子たちがあとからどんどん入ってきた。

地のものを食べようと思って入ったのだが、まぁ普通の居酒屋さんなので特別なものはない。ただ、日本酒などは信州のものがあったので熱燗でいただいて、馬刺しとかも食べた。あとはフライドポテトとかいつものやつ…。

19時になったので店を離脱したのだが、つぎの新幹線が19:43。ちょっと時間があるので土産屋に立ち寄ったのだがまだ時間が余っているので、駅前のよろづやさんという蕎麦屋によって蕎麦をいただくことに。

馬肉そば

頼んだのは「馬肉そば」。
ここの蕎麦は手打ちそばなので乱切りに近い形の不揃いのそばで歯ごたえもそこそこあっておいしかった。馬肉もまったく臭みがなく、やわかくて美味。おつゆが異常に甘かったのだが、これは馬肉をおいしくいただくための味付けなのか、この地がこういう味付けのおつゆなのかが不明のままだ。

午年なだけに馬刺しも馬肉そばも食べて縁起がいいのかな。逆に干支の動物は食べない方がいいのかな。ようわからん。(どうでもいいというのが、素直な表現)

上田→東京 新幹線切符

残念ながら鈍行で東京に戻る足がなく、上田からはどうしても新幹線に乗らなければ日帰りすることができない。新幹線で4つ先の高崎まで行けば鈍行で戻ることも可能なのだが、高崎まで新幹線に乗るんだったら…。疲労と時間の遅さから東京まで新幹線に乗るというタブーをおかす結果になってしまった。(5,920円)

新幹線、ホントに快適だったw
7時間かかった道程が、わずか1時間半。揺れないしビール飲めるし、眠れるし。最高です。

おわりに

さて、文中に運賃をカッコ書きしていたことにお気づきだろうか。「鈍行だから安いだろう」みたいな感覚もあるので、本当はどっちが安いのかを比較しようと、運賃を書いていたのだ。ここでまとめてみる。

【往路】
新宿→横川(JR東日本 埼京線+高崎線+信越本線):2,210円
グリーン券(大宮→高崎):1,000円
横川→軽井沢(JRバス):500円
軽井沢→上田(しなの鉄道線):850円
上田→別所温泉(上田電鉄別所線):570円
計:5,130円

【復路】
別所温泉→上田(上田電鉄別所線):570円
上田→新宿(長野新幹線あさま548号+都区内無料切符):5,920円
計:6,490円

実際には上田⇔別所温泉は往復切符と入湯チケット付のものを買っているので、少々違うのであるが、わかりやすくするために片道の料金で計算してみた。
ご覧のとおり、たったの1,360円の差である。時間にすると往路は約7時間、復路は約2時間半なので、普通に考えたら1,360円で4時間半を買ったほうがお得かもしれない。

しかし、新幹線で一気に行ってしまうと、釜めしやSLの経験はできなかったし、アプト式の鉄道についても知ることもできなかったし、小諸駅には立ち食いそば屋さんがないこととか、そういうことに気づくことができないだけでなく、各地に足を踏みおろしたり、鈍行の風景やそこに暮らす人たちの雰囲気を感じる経験すらできない。なので、時間はかかったが鈍行の旅もなかなか捨てたもんじゃないなと。

この旅の限界(鈍行+日帰り)は、行ける距離が限られていること。また、新幹線のように極端に速い乗り物が通っているところでないと、マジで戻って来られないところだ。また連休があればローカル線の旅に出ようと思う。

改めて記事を見てみると「鉄」っぽい記事だな。電車くらいしか特徴がなかったというのも、この旅のいい思い出。